フラットウッズ・モンスター再検証
1952年、丘の上の「3メートルの怪物」は何だったのか
火の玉が丘に落ちた。確かめに登った母親と少年たちは、懐中電灯の光の中に、赤い顔と大きなフードを持つ3メートルの影を見た。70年以上たった今も、目撃者は証言を変えていない。いっぽう、同じ夜には3つの州で流星が見えていた。当時の新聞、空軍の記録、懐疑派の現地調査、目撃者の言葉を並べて、あの夜をもう一度読み直す。

この記事の要点
- 1952年9月12日の夕方、ウェストバージニア州フラットウッズで、母親キャスリーン・メイと少年たち計7人が「赤い顔の巨大な人影」を見たと訴えた
- 同じ夜、メリーランド・ペンシルベニア・ウェストバージニアの3州で明るい流星が見えていた。米空軍の資料にも、この夜の「火の玉」の記録が残る
- 懐疑派の調査者ジョー・ニッケルは2000年に現地を調べ、「流星+航空用の赤い灯火+枝にとまったメンフクロウ」で説明できると結論した。ただし、でっち上げではないとも明言している
- 目撃者のフレッド・メイは後年も「生き物ではなく機械だった」と証言を変えていない。町は今、怪物を観光の顔にしている
011952年9月12日、丘の上で起きたこと
フラットウッズは、ウェストバージニア州の真ん中、ブラクストン郡の丘陵地にある小さな町だ。1952年9月12日の金曜日、午後7時15分ごろ。校庭で遊んでいた少年たちが、燃えるような物体が空を横切るのを見た。物体は、近くのG・ベイリー・フィッシャーの農場の丘の上に「着地した」ように見えた[1]。
少年たちは、近くのメイ家に駆け込んだ。母親のキャスリーン・メイは町の美容師だった。懐中電灯を用意し、少年たちと一緒に丘を登った。加わったのは、メイ夫人の息子エディ(13歳)とフレディ、ニール・ナンリー(14歳)、州兵のジーン・レモン(17歳)、トミー・ハイヤーとロニー・シェイバー(ともに10歳)。レモンの犬もついてきた[1]。
丘の頂上の少し先に、脈打つような赤い光が見えた。そのとき、レモンが動物のように光る一対の目に気づき、懐中電灯を向けた。光の中に浮かんだのは、見上げるほど大きな人の形だった。丸くて赤い「顔」を、とがったフードのような形が囲んでいた。体は暗く色がはっきりしなかったが、のちに緑だったと言う人もいた。メイ夫人は、カーテンのようなひだがあったと話している[1]。
それはシューッという音を立て、一行のほうへ滑るように近づいてきた。レモンは悲鳴を上げて懐中電灯を落とし、全員が丘を駆け下りた[1]。怪物を見ていたのは、ほんの一瞬だった。バーカーの記録では「1秒か、せいぜい数秒」とされる[1]。

現場には鼻をつく霧が立ちこめていた。あとで気分が悪くなった者もいた[1]。事件の約2週間後に現地を訪れた民間のUFO研究団体は、少年たちののどがひどく腫れ、医師が「マスタードガスに似た症状」と言ったこと、レモンが夜中にけいれんと嘔吐に苦しんだことを書き残している[3]。同じ報告は、怪物の姿をこう描いた。
It was as though a light had been turned on inside the figure.
まるで、その姿の内側で明かりがともったかのようだった。
その夜、保安官と保安官補も現場を調べた。2人はちょうど、別の場所で「飛行機が墜落した」という通報を調べてきたところだった。しかし丘の上では「何も見ず、何も聞かず、何もにおわなかった」という[1]。墜落の通報をしたのはウッドロウ・イーグルという住民で、彼も山の向こうへ消える光を見ていた[9]。
地元紙ブラクストン・デモクラットの共同発行人A・リー・スチュワートは、事件の約1時間後、レモンや散弾銃を持った男たちと丘に戻った。残っていたのは悪臭だけだった[5]。翌朝、スチュワートは草地に2本の「すべった跡」と、「妙なゴムのような付着物」を見つけたと報告する。これが「円盤が着地した証拠」として語られていく[1]。
02新聞・ラジオ・テレビ:怪物が「全国区」になるまで
話はすぐに地元の新聞に載った。HISTORYの記事は、当時の地元紙の書き出しをこう引いている[2]。
Seven Braxton County residents on Saturday reported seeing a 10-foot Frankenstein-like monster in the hills above Flatwoods
土曜日、ブラクストン郡の住民7人が、フラットウッズの上の丘で、高さ10フィート(約3メートル)のフランケンシュタインのような怪物を見たと報告した。
同じ記事によると、レモンが見たのは「血のように赤い体と、光っているような緑の顔」の怪物だった。ただ、警察の反応は冷ややかだった。州警察はこの報告をヒステリーだと笑い飛ばしたという[2]。
州警察は、怪物の背丈が「24時間で7フィートから17フィートに伸びた」と皮肉った[2]。いっぽうスチュワートは、目撃者たちは自分が見たなかで一番おびえた人たちだったと語り、こう続けている[2]。
People don’t make up that kind of story that quickly
あんな話を、あんなに短い時間で作れるものではない。
9月14日、州都チャールストンのデイリー・メール紙は「怪物に出くわした住民が失神、体調を崩す」と報じた。紙面には、メイ夫人がグレイハウンドのバス停で怪物のスケッチを掲げる写真が載った。これが、怪物の姿が絵として世に出た最初とされる。9月19日には、メイ夫人、レモン、スチュワートがニューヨークのテレビ番組「We The People」に出演し、全国の視聴者が初めて怪物の姿を目にした[5]。
地元紙の元編集者ホルト・バーンは、1966年の回想記事で、新聞記事は全国に配信され、大手ネットワークのラジオでも放送され、全国から何百件もの電話がかかってきたと書いた。通信社はこの話をその年のニュースの11位に挙げたという[6]。
騒ぎには時代の空気もあった。この年の4月、人気雑誌LIFEは空飛ぶ円盤を真剣に取り上げる記事を載せていた。ソ連の原爆実験から3年、朝鮮戦争のさなかで、空は「何かが来るかもしれない場所」だった[2]。UFO作家のグレイ・バーカー、博物学者のアイヴァン・サンダーソン、元海兵隊少佐のドナルド・キーホーらが、次々にこの事件を取り上げた[1]。バーカーはのちに、政府の謎の男たち「メン・イン・ブラック」の話を広めた人物としても知られる[2]。
一方で、早くから冷静な見方もあった。9月23日のチャールストン・ガゼット紙は、怪物は流星のガスが作った幻ではないかという説を載せている[1]。「あの夜、空を横切ったもの」が、話のもう一つの鍵になる。
03同じ夜の「火の玉」:流星の記録
2000年6月、懐疑派の調査者ジョー・ニッケルはフラットウッズを訪ね、半日かけて住民に話を聞いた。最初に会ったのは、当時を知る95歳のジョニー・ロッカードだった[1]。
Johnny Lockard, 95, told me that virtually everyone who had seen the alleged flying saucer in 1952 recognized it for what it was: a meteor.
95歳のジョニー・ロッカードは私に、1952年に「空飛ぶ円盤」を見た人は、ほとんど全員がその正体に気づいていたと話した。流星だ。
記録もこれを裏づける。バーンは1966年に、大きな流星が少なくともメリーランド、ペンシルベニア、ウェストバージニアの3州で見えたと書いた。メリーランド科学アカデミーの職員は、9月12日午後7時、流星が高さ60〜70マイル(約100〜110キロ)でボルティモアの上空を通ったと発表している。その進路の先にウェストバージニアがあった[1]。
アメリカ空軍のUFO調査「プロジェクト・ブルーブック」の資料にも、この夜の記録がある。表題は「火の玉 1952年9月12日」で、手書きで「フラットウッズ、ウェストバージニア」と書き添えられている[7]。

タイプ打ちの部分によると、火の玉は東北東から西南西へ、水平から約30度の角度で進み、5〜6秒見えた。時刻はおよそ午後7時(東部標準時)。色は「明るい緑がかった白」で、形は前が細い卵形、後ろは青緑。メリーランド州カンバーランドの上空を通ってフラットウッズの方角へ飛んだと仮定すると、オハイオ州アクロンから160マイル以内を通ったことになる、とある。最初に見えたときの高さは約65マイル(約105キロ)とされる[7]。
高さ100キロを超えるところで光る流星が、丘のすぐ向こうに「落ちた」はずはない。それでも、なぜ少年たちには着地したように見えたのか。ニッケルは2021年のインタビューで、これは流星によくある錯覚だと説明している。流星は「何度も何度も、向こうの丘に落ちたと言われる」のだという[8]。
流星はとても遠くを飛んでいるのに、明るすぎて頭のすぐ上を通るように感じる。そして丘の陰に消えると、そこに降りたように見える、という[8]。保安官が調べていた「飛行機の墜落」も、同じ流星だった可能性がある[9]。

肯定側の見方もある。サンダーソンは、各地で目撃された光が同じ方向、同じ速さ、同じ時刻に動いていたことに注目した。そこから「空飛ぶ機械の編隊」が飛び、その1機がフラットウッズに着陸したと考えた。ニッケルは、同じ事実からは「1つの物体を各地の人が見た」と考えるほうが自然だと反論している[1]。キーホーによれば、空軍も雑誌記者を装った2人を現地に送り、物体は流星だったと判断したという[1]。
04赤い光、すべった跡、においを確かめる
火の玉が流星だったとしても、まだ説明の要るものが残る。丘の上で脈打っていた赤い光、草地の跡、においと体調不良、そして怪物そのものだ。ニッケルはこれを1つずつ調べた[1]。
まず赤い光。目撃者は「明るくなったり暗くなったりする赤い光」「大きな火の玉」と表現した。ただ、どれくらい離れていたかは分からず、大きさを比べる目印もなかった[1]。そして、事件当時からこんな指摘があった。
a local school teacher called attention to "the light from a nearby plane beacon,"
地元の学校の教師が「近くの飛行機用ビーコン(航空灯火)の光」に注意を向けた。
サンダーソン自身も、丘の上からは常に3つのビーコンが見えると認めていた。それでも、宇宙からの来訪者という説を推していたため、ビーコンの可能性は退けたという[1]。2014年に事件を取り上げた懐疑派の番組Skeptoidも、フラットウッズ周辺には赤い光で航空機に知らせる灯火が3つあったとしている[9]。

次に、すべった跡。ニッケルはロッカードの息子マックスから話を聞いた。マックスは事件の晩、うわさを聞いて自分の1942年式シボレーのピックアップトラックで丘に上がり、草地をぐるりと回ったが、何も見つからなかったという。油の跡も、古いトラックなら説明がつく[1]。
バーカーもこの話を聞いていた。しかし電話で話がかみ合わず、トラックは跡の場所に行っていないと結論した。そもそもバーカーが着いたのは事件の1週間後で、その間に雨が降り、油の跡は見つからなかった。草が踏み荒らされていたのも、大勢の見物人のせいかもしれないと本人が認めている[1]。ニッケルはマックスの車で現場まで案内され、跡を付けたのは彼だと納得した。
においと体調不良はどうか。においを感じたのは、地面に顔を近づけたスチュワートくらいで、最初に現場に入った人たちは気づかなかった。サンダーソンでさえ、においは「この辺りに多い、ある種の草から出たものとほぼ確実」と書いている。空軍の調査員は、少年たちの不調は恐怖による体の反応だと結論した。霧についても、保安官が到着したとき、斜面に霧が降りてきていた[1]。
ただし、目撃者側の証言は今もこれと食い違う。肯定側の研究家フランク・フェスキーノは1991年からメイ家に取材を重ね、録音を残した。フェスキーノによれば、フレディ・メイはにおいをこう表現したという[10]。
the smell was similar to the old TV tubes burning out in the old sets from years ago
そのにおいは、昔の古いテレビで真空管が焼き切れたときのにおいに似ていた。
フェスキーノは、症状は恐怖のせいではなく、怪物が出したガスによるものだと主張する[10]。地元の観光局のサイトも、のどの痛みや吐き気がマスタードガスにさらされた症状と似ていると書いている[11]。においと体調不良については、「恐怖と疲れ」「草や霧」で説明する側と、「未知のガス」とする側が、今も平行線のままだ。
05怪物はメンフクロウだったのか
いちばん大きな謎は、怪物そのものだ。実は「動物ではないか」という見方は、事件の直後からあった。メイ夫人自身、最初は光る目を「木にいるオポッサムかアライグマ」だと思った。地元ではオスのシカ説も出た。そして、キーホーによれば、空軍の調査員は「枝にとまった大きなフクロウ」で、その下のやぶが巨大な姿に見せ、あとは興奮した目撃者の想像が補ったと考えた[1]。
ニッケルはこの考えを一歩進め、ふつうのフクロウではなく、メンフクロウ(学名 Tyto alba)だと特定した。根拠は、証言とメンフクロウの特徴の重なりだ[1]。
- 下半身があいまい:バーカーによれば、7人のほとんどが「腰から下は見えていなかった」と話した。枝にとまった鳥なら、下半身はない[1]
- 丸い顔とフード:メンフクロウの顔はハート形の大きな円盤で、図鑑には「フードをかぶった老婆」のようと書かれる[1]
- 音:怪物の声は「シューという音と、かん高いキーキー声の中間」。メンフクロウは、鳥らしくない甲高い叫びやシューという声を出す[1]
- 動き:「滑るように」「弧を描いて近づいた」という証言は、飛び立つ鳥の動きに合う[1]
- かぎ爪:メイ夫人が見た「恐ろしい爪」は、猛禽の鋭い爪と合う[1]
- 場所:現場は農場を見下ろす丘の、大きなオークの木のそば。メンフクロウは農地に多く、木のうろを好む[1]

顔が赤かったことについては、ナンリーが「赤い光に照らされていた」と話している点を挙げ、ビーコンの光だった可能性を示した。もう一つの可能性として、メスのメンフクロウは顔や腹の羽が黄褐色を帯びることも挙げている。さらに、すぐ逃げなかったのは、ひなを守るメスだったからではないかと推測した。ここはニッケル自身も「推測」と断っている[1]。結論は、古いことわざをもじった一文だった。
if it looked like a barn owl, acted like a barn owl, and hissed, then it was most likely a barn owl.
メンフクロウのように見え、メンフクロウのようにふるまい、シューと鳴いたのなら、それはたぶんメンフクロウだったのだ。
大事なのは、ニッケルが目撃者を「うそつき」扱いしていないことだ。
I agree with most previous investigators that the monster sighting was not a hoax.
私は、これまでの調査者の多くと同じく、怪物の目撃はでっち上げではなかったと考える。
一行は流星を見て、その場の思いつきで丘に登った。話を聞いた人は皆、目撃者たちが本当におびえていたと言う。円盤が降りたと思い込み、赤い光と変なにおいで「やはり着陸した」と感じていたところへ、夜行性で間近に見たこともない鳥が、懐中電灯に驚いて叫びながら飛びかかってきた。恐怖が姿を大きくした、というのがニッケルの見立てだ[1]。Skeptoidも同じ立場で、目撃者が皆、正直に証言していたことは疑わないと書いている[9]。
反論もある。フェアモント州立大学の学生紙は、流星、フクロウ、やぶ、においの元が、すべて同じ時に同じ場所でそろう必要があり、偶然が重なりすぎると指摘した[13]。フェスキーノも、メンフクロウ説をはっきり否定している[10]。目撃者の側も、後で見るように「生き物ではなかった」と言い続けている。
| 説 | 根拠 | 評価 |
|---|---|---|
| 火の玉は流星 | 3州での目撃、メリーランドの発表、空軍ブルーブックの「火球」記録がそろう[1][7] | 有力 |
| 赤い光は航空用の灯火 | 当時の教師の指摘と、丘から3つ見えたというサンダーソンの記録。ただし、どの灯火かまでは特定されていない[1] | 有力 |
| すべった跡はトラック | マックス・ロッカード本人の証言。バーカーは否定したが、着いたのは1週間後で雨の後[1] | 有力 |
| 怪物はメンフクロウ | 証言の特徴と多く重なる。ただし目撃者本人は否定し、決定的な証拠はない[1][13] | 確かめられず |
| 体調不良は未知のガス | 医師の所見とされる記録はあるが、原因を示す物証はない。においは草や霧でも説明できる[3][1] | 確かめられず |
| 宇宙船が着陸した | 流星の高度は約100キロ。着陸跡もトラックで説明でき、機体の物証は何も残っていない[7][1] | 否定的 |
| 目撃者のでっち上げ | 一行は偶然集まり、周りの人は皆、本当におびえていたと証言する[1] | 否定的 |
06目撃者は何と言い続けたか
目撃者の言葉は、年月とともに少しずつ形を変えた。キャスリーン・メイは1966年の取材で、自分が見たのは「怪物ではなかった」、「政府が開発していた秘密の飛行機」だったと話している[1]。2000年にニッケルが取材を申し込んだとき、メイ夫人と息子フレッドはともに断った[1]。
怪物の姿も、語られるたびに違う。背丈は7フィート、10フィート、13フィート、17フィートと揺れた[2]。州の百科事典は「高さ12フィート近く、幅4フィート」「音を立てずに浮いて近づいた」と書くが[4]、初期の記録では「シューッという音」を立てて滑ってきたことになっている[1]。どちらが正しいかではなく、記録の段階によって細部が違う、ということだ。
後年の証言で目立つのは、「生き物ではなく機械だった」という見方だ。2018年のドキュメンタリー映画『The Flatwoods Monster: A Legacy of Fear』で、フレッド・メイはこう語ったと紹介されている[12]。
What I saw, it looked like the V2 rockets that the Germans flew over and hit London with
私が見たのは、ドイツがロンドンに撃ち込んだV2ロケットのようだった。
同じ紹介によれば、フレッドは、上がとがっていて、船の窓のような「舷窓」があり、その奥に光が見えたと、どの取材でも言ってきたと話している[12]。2018年のHISTORYの記事は、フレディとエドの兄弟は70代後半で健在だが、もう記者の取材には応じていないと伝えた。そのうえで、映画の予告編でのフレディの言葉を紹介している[2]。
It doesn’t matter to me whether people believe, or don’t believe.
人が信じようと信じまいと、私にはどうでもいいことだ。
フラットウッズ・モンスター博物館を運営するアンドリュー・スミスは、メンフクロウ説に首をかしげる一人だ。「何だったのかは分からない」と前置きしたうえで、こう話した[13]。
It’s one thing to think you saw something when you’re ten. But it’s another thing to never change what you think you saw until you’re eighty.
10歳のときに何かを見たと思うのは、よくあることだ。でも、見たと思ったものを80歳になるまで一度も変えないのは、話が別だ。
この言葉は重い。ただ、証言を変えないことと、証言が正しいことは別の問題でもある。数秒の、それも恐怖のさなかの記憶は、何十年も語り直されるうちに固まっていく。メンフクロウ説が正しくても、目撃者が本気でそう信じていることとは矛盾しない。
事件の前後には、ほかの目撃談も語られるようになった。北に数キロ離れた町で、火の玉のあとに「人の3倍の背丈の黒い影」を見たという女性の話は、2015年に孫娘が博物館に記録を届けて初めて知られた。翌日の夜、車が止まり、とかげのような手をした怪物が現れたという夫婦の話は、事件から3年後の1955年、作り話の多い男性向け雑誌に載ったもので、博物館長自身も慎重に扱っている[13]。
07「怖い話」から町の顔へ:博物館と椅子
2000年にニッケルが町を訪れたとき、入口には「ようこそフラットウッズへ グリーン・モンスターの町」という看板が立っていた[1]。それでも、町が怪物を胸を張って売り出すまでには長い時間がかかった。
Until only a few years ago, the Flatwoods Monster was more popular in Japan than it was in Flatwoods.
ほんの数年前まで、フラットウッズ・モンスターはフラットウッズよりも日本で人気があった。
観光案内サイトRoadsideAmericaによると、2011年の取材では、怪物のランプを作る住民が名前を出さないでほしいと頼んだほどだった。流れを変えたのは、郡の観光局長になった若いアンドリュー・スミスだ。地元では「怪物の話はもううんざり」という声が多かったが、スミスは、同じ州のポイント・プレザントが「モスマン」で観光客を集めているのを見ていた[14]。スミスは、日本のゲーム会社がこの怪物をゲームのボス役に何度も使ってきたことにも触れている[18]。
高さ3メートルの像は高すぎる。そこでスミスは、怪物の形をした大きな椅子を思いついた。観光局は2014年12月に計画を始め、地元の業者アラン・ジョンソンが高さ10フィート(約3メートル)の椅子を作った。1脚目は2015年5月に置かれ、全部で5脚が郡内に散らばっている。2016年には州知事が9月12日を「モンスター・デー」と宣言した[15]。

椅子の形は同じだが、色はスミスが1脚ずつ塗り分けた。「全部同じなら、誰も2脚目を見に行かないだろう」という理由だ[16]。5脚すべてで写真を撮ると、愛称「ブラクシー」を解放するステッカーがもらえる企画もある[15]。
2017年には着ぐるみのマスコットができ、同じ年の終わりに観光局の事務所が広い建物に移って、博物館が生まれた[14]。博物館は隣町サットンのメインストリートにあり、州間高速道路79号線の62番出口から約3キロ。郡の観光案内所も兼ねている[17]。1960年代後半から作られている陶器のランタンは、事件にちなむ土産として一番古いものだ[11]。

面白いのは、町おこしを支える人が、必ずしも怪物を信じていないことだ。陶器の怪物像を2年で1,000体売ったジョン・ギブソンは、HISTORYの取材に「イースター・バニーもサンタも信じないし、フラットウッズ・モンスターはもっと信じない。でも、町を盛り上げたい」と話した[2]。博物館には、怪物が現れたオークの木のかけらも展示されている[2]。
ただ一つ、怪物を歓迎していない場所がある。最初の目撃地の丘だ。土地は私有地で、持ち主は立ち入りを認めていない[14]。観光局も、丘ではなく博物館と椅子を訪ねてほしいと呼びかけている[11]。
あの夜に空を横切ったのは、ほぼ間違いなく流星だった。赤い光とすべった跡にも、地に足のついた説明がある。怪物の正体は、メンフクロウ説がいちばん筋が通るが、決め手はない。確かなのは、7人が本当に何かにおびえたこと、そしてその恐怖が70年かけて、町の誇りに変わったことだ。
出典・参考資料
- Joe Nickell「The Flatwoods UFO Monster」Skeptical Inquirer 24(6), 2000年11/12月号, pp.15–19(Center for Inquiry が公開するPDF). https://centerforinquiry.s3.amazonaws.com/wp-content/uploads/sites/29/2000/11/22164839/p15.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
- Roy Wenzl「In 1952, the Flatwoods Monster Terrified 6 Kids, a Mom, a Dog—and the Nation」HISTORY, 2018年7月20日公開・2025年5月28日更新. https://www.history.com/articles/flatwoods-monster-west-virginia(閲覧 2026-10-04)↩
- Civilian Saucer Investigation「More On The "Green Monster"」CSI Bulletin #2, 1953年冬号(Project 1947 による再録). http://www.project1947.com/shg/csi/csiv1-2.html(閲覧 2026-10-04)↩
- Buddy Griffin「Flatwoods Monster」e-WV: The West Virginia Encyclopedia, 2024年2月8日. https://www.wvencyclopedia.org/entries/2127(閲覧 2026-10-04)↩
- Eric Waggoner「West Virginia's Alien Invader」The Broadside 2(3), West Virginia Humanities Council, 2022年6月(PDF). https://wvhumanities.org/forms/TBS_2022.09_June_PR.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
- Wikipedia「Flatwoods monster」(Holt Byrne 1966年の記事の引用部分). https://en.wikipedia.org/wiki/Flatwoods_monster(閲覧 2026-10-04)↩
- Project Blue Book「FIREBALL – SEPTEMBER 12, 1952 – Flatwoods, W Va.」(Wikimedia Commons 所蔵のスキャン「Project Blue Book report - xxxx-xx-6384139-Flatwoods-WestVirginia.pdf」2ページ目). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Project_Blue_Book_report_-_xxxx-xx-6384139-Flatwoods-WestVirginia.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
- Bethania Palma「What Was the Flatwoods Monster?」Snopes, 2021年12月4日. https://www.snopes.com/articles/383097/flatwoods-monster-mothman-owl/(閲覧 2026-10-04)↩
- Ryan Haupt「The Braxton County Monster」Skeptoid Podcast #434, 2014年9月30日. https://skeptoid.com/episodes/4434(閲覧 2026-10-04)↩
- 「Feschino Releases Unheard Testimony of "Flatwoods Monster" Witness」Cryptomundo, 2014年2月25日. https://cryptomundo.com/bigfoot-report/feschino-releases-unheard-testimony-of-flatwoods-monster-witness/(閲覧 2026-10-04)↩
- Marilyn Hosey「The Flatwoods Monster」Visit Braxton, WV(Braxton County Convention and Visitors Bureau). https://braxtonwv.org/the-flatwoods-monster/(閲覧 2026-10-04)↩
- 「The Flatwoods Monster Case」Hangar 1 Publishing ブログ. https://hangar1publishing.com/blogs/ufos-uaps-and-aliens/the-flatwoods-monster(閲覧 2026-10-04)↩
- 「Conspiracy Corner – When the Sky Fell」The Columns(Fairmont State University の学生紙), 2020年12月5日. https://columnsfairmontstate.com/3173/conspiracy-corner/conspiracy-corner-when-the-sky-fell/(閲覧 2026-10-04)↩
- 「The Monster That Wouldn't Die, Flatwoods, West Virginia」RoadsideAmerica.com. https://www.roadsideamerica.com/story/61443(閲覧 2026-10-04)↩
- 「See the Chairs」Visit Braxton, WV. https://braxtonwv.org/the-flatwoods-monster/see-the-chairs/(閲覧 2026-10-04)↩
- 「Classic Monster Chair, Sutton, West Virginia」RoadsideAmerica.com. https://www.roadsideamerica.com/story/48617(閲覧 2026-10-04)↩
- 「Visit the Flatwoods Monster Museum」Visit Braxton, WV. https://braxtonwv.org/the-flatwoods-monster/visit-the-museum/(閲覧 2026-10-04)↩
- 「Braxie helps to promote 'monstrous' tourism in Flatwoods area」WV MetroNews, 2017年7月16日. https://wvmetronews.com/2017/07/16/braxie-helps-to-promote-monstrous-tourism-in-flatwoods-area/(閲覧 2026-10-04)↩
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