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検証UFO公文書

米政府はUFOについて何を報告したか
144件の評価からAARO・NASAの結論まで

2021年6月、アメリカの情報機関のまとめ役である国家情報長官室(ODNI)が、軍のパイロットたちが報告した「UAP」144件の評価を公表した。説明できたのは1件だけ。この一文は「政府がUFOを認めた」と世界中で報じられた。それから数年、国防総省には専門の部署AAROができ、報告は千件を超え、議会では「政府は墜落した機体を回収している」という証言まで出た。政府の報告書は、実際には何を書いているのか。数字と原文で順にたどる。

文 未確認生物研究所 編集部公開 2026年10月4日約15分で読めます出典 8件
下院の公聴会で証言席に並ぶグレイブス氏、グラッシュ氏、フレイヴァー元中佐
PD2023年7月26日、米下院監視委員会の小委員会が開いたUAP公聴会。左からライアン・グレイブス、デビッド・グラッシュ、デビッド・フレイヴァーの各証人。出典:U.S. House Committee on Oversight and Accountability。パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

この記事の要点

  • 2021年のODNI予備評価は、2004〜2021年の報告144件のうち、はっきり説明できたのは1件(しぼんでいく気球)だけだとした。ただし「説明できない」は「異星のもの」という意味ではなく、多くはデータ不足だった
  • 報告の数は、2022年8月時点で510件、2023年4月時点で801件、2024年10月時点で1,652件に増えた。正体が分かったものは、気球・鳥・ドローン・人工衛星などのありふれた物ばかりだった
  • 2023年7月の議会公聴会で、元情報将校のグラッシュは「数十年続く墜落機の回収・分析計画がある」と証言した。ただし公開の場で証拠は示されなかった
  • AAROは2024年の歴史記録報告で、1945年以降の政府の調査を洗い直し、地球外の技術を回収・分析しているという主張を裏づける証拠は見つからなかったと結論した
  • NASAの独立調査チームも2023年、査読つきの科学文献に地球外起源の決定的な証拠はないとし、まずは質のよいデータを集める仕組みづくりを勧めた

012021年6月:144件のうち、説明できたのは1件

話の出発点は、議会の注文だった。2021会計年度の情報活動授権法に付けられた上院の報告書が、国家情報長官室(ODNI)に対し、UAPがどんな脅威なのかを評価して報告するよう求めた。UAPは「Unidentified Aerial Phenomena」の略で、すぐには正体が分からない空中の物体を指す。昔ながらの「UFO」とほぼ同じものを、軍の言葉で言い直した呼び名だ[1]。

調べる役は、国防総省が2020年8月に作った「UAPタスクフォース(UAPTF)」が担った。海軍が中心となった組織だ[6]。2021年6月25日、ODNIはその結果を9ページの「予備評価」として公表した。対象は2004年11月から2021年3月までの、主に米政府内部からの報告だった[1]。

「Preliminary Assessment: Unidentified Aerial Phenomena 25 June 2021」と書かれた国家情報長官室の報告書の表紙
PD2021年6月25日付のODNI「予備評価:未確認空中現象」の表紙。米連邦政府の著作物で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

数字は小さかった。米政府の情報源からの報告は144件。そのうち80件は、レーダーや赤外線カメラなど複数のセンサーでとらえられていた。大半は、軍の訓練空域で予定の訓練をじゃました物体についての報告だった[1]。いちばん引用された一文はこれだ。

We were able to identify one reported UAP with high confidence. In that case, we identified the object as a large, deflating balloon. The others remain unexplained.

高い確信をもって正体を特定できたUAPは1件だった。それは、しぼんでいく大きな気球だった。ほかはすべて、説明がついていない。

「143件が説明できない」と聞くと、正体不明の飛行物体が143機あったように思える。だが報告書が言っているのは、データが足りず、どれとも決められないということだ。報告書は、正体が分かれば「空中の散らかり(鳥・気球・ドローン・ビニール袋など)」「自然の大気現象」「米政府や企業の開発中の機体」「外国の機体」「その他」の5つのどれかに入るだろう、と整理している[1]。

その一方で、報告書は気になる点も正直に書いた。

In 18 incidents, described in 21 reports, observers reported unusual UAP movement patterns or flight characteristics.

21件の報告に書かれた18の事例で、観察者はUAPのふつうでない動き方や飛び方を報告していた。

強い風の中で止まっているように見えた、風に逆らって動いた、急に向きを変えた、推進装置が見えないのに速く動いた、といった内容だ。ただし報告書は、こうした観察はセンサーの誤り、相手側の妨害(なりすまし)、観察者の見誤りの結果かもしれず、さらに厳しい分析が要るとも書いている[1]。パイロットがUAPとのニアミス(異常接近)を報告した例も11件あった[1]。

もう一つ、報告書は「報告しにくさ」の問題を挙げた。海軍が報告の決まった手順を作ったのは2019年3月で、空軍が取り入れたのは2020年11月だった。それまでは報告の仕組みそのものがなかった。UAPを見た、報告した、同僚に話した、というだけで軽く見られる空気があり、黙っている人も多いだろうと書いている[1]。

022022年版:510件のうち、半分以上は「ありふれたもの」

予備評価のあと、国防総省は担当の組織を作り直した。2022年7月、UAPタスクフォースの後を継ぐ形で「全領域異常解決局(AARO)」ができた。法律の上でも、UAPの定義は空だけでなく、海や、空と海の間を行き来する物体にまで広げられた[2]。呼び名も、のちに「Unidentified Anomalous Phenomena(未確認異常現象)」へ変わった[7]。

AAROのデータをもとにした最初の年次報告は、2023年1月12日に議会へ出された[6]。

「2022 Annual Report on Unidentified Aerial Phenomena」と書かれた国家情報長官室の報告書の表紙
PDODNI「2022年版 未確認空中現象年次報告」の表紙。米連邦政府の著作物で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

予備評価の締め切り(2021年3月5日)のあと、新しい報告が247件届いた。さらに、締め切り前の出来事なのに予備評価に入っていなかった報告が119件見つかった[2]。

These 366 additional reports, when combined with the 144 reports identified in the preliminary assessment, bring the total UAP reports catalogued to date to 510.

これら366件の追加の報告を、予備評価で扱った144件と合わせると、これまでに登録されたUAP報告は合計510件になる。

中身の分析は一歩進んだ。新しい366件のうち、26件は無人機(ドローン)かそれに似たもの、163件は気球かそれに似たもの、6件は鳥や気象、ビニール袋のような空中のごみと見られた。半分以上が「目立った特徴のないもの」だった[2]。

ただし報告書は、これは「最初のふり分け」で、正体が確定したという意味ではないと念を押している。残る171件は、まだ何とも言えないまま残った。その中には、ふつうでない飛び方や性能を見せたように見えるものもあり、さらに分析が要るとした[2]。

この報告書は、報告が増えた理由も書いている。UAPが飛行の安全や外国の偵察につながるかもしれないという理解が広がったこと、そして報告することへの偏見が減ったことだ[2]。米軍機とUAPの衝突はこれまで1件もなく、UAPとの遭遇が健康に悪い影響を与えたと確認された例もない、とも書いた[2]。

032023・2024年版:801件、そして1,652件へ

2023年10月に出た2023会計年度の報告では、2022年8月31日から2023年4月30日までに、新たに291件の報告がAAROに届いた。これで合計は801件になった。291件のうち290件は空、1件は海での報告で、海と空を行き来するものや宇宙での報告はなかった[3]。

この時期から、民間機のパイロットからの報告が増え始めた。連邦航空局(FAA)からAAROへ届いた報告は100件を超えた。その大半は、形の分からない「正体不明の光」だった。異常な動きをした、民間機に危ないほど近づいた、という報告はなかった[3]。

AAROのスライド「UAP Reporting Trends 1996-2023」。高度の棒グラフ、典型的な特徴の表、形の円グラフ、世界地図の分布
PDAAROが2023年5月31日のNASA公開会合で示したスライド「UAP報告の傾向 1996〜2023」。形は「球・丸・オーブ」が47%で最多、高度は1万〜3万フィートが中心とされる。米連邦政府の著作物で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

報告書は、分析の手ごたえをこう書いた。

AARO's analytic efforts are confirming that only a very small percentage of UAP reports display interesting signatures, such as high-speed travel and unknown morphologies.

AAROの分析で確かめられつつあるのは、高速での移動や見たことのない形のような、興味深い特徴を示すUAP報告は、ごくわずかな割合にすぎないということだ。

そして、正体が分からないまま残る理由は、主にデータの質だとした。レーダーや赤外線カメラのデータが足りないこと、赤外線のまぶしさ(フレア)などの機器のくせ、見る位置によって物の位置や速さがずれて見える「視差」などが、見誤りを生む[3]。報告書の見通しはこうだ。

Based on the ability to resolve cases to date, with an increase in the quality of data secured, the unidentified and purported anomalous nature of most UAP will likely resolve to ordinary phenomena and significantly reduce the amount of UAP case submissions.

これまでに事例を解決できた実績からみて、得られるデータの質が上がれば、ほとんどのUAPの「正体不明」で「異常」とされる性質は、ありふれた現象に行き着き、UAPの報告件数も大きく減るだろう。

2024年11月に国防総省のサイトに載った2024会計年度の報告は、AAROの名で出たものだ。2023年5月1日から2024年6月1日までに757件の報告が届いた。うち485件はこの期間の出来事、272件は2021〜2022年の出来事で、届くのが遅れたものだった。2024年10月24日時点で、報告は合計1,652件になった[4]。

757件の行き先も書かれている。49件は解決、243件は解決の見込みで最終確認待ち。どれも気球・鳥・ドローン・人工衛星・航空機などだった。21件は、さらに分析する価値があるとされた。残る444件は、分析できるだけのデータがないため「保管」に回された[4]。

正体が分かった例として、報告書はスターリンク衛星を挙げている。ある民間機のパイロットが夜空に白く点滅する光を見た。調べると、その約1時間前にフロリダ州ケープカナベラルからスターリンク衛星が打ち上げられ、見えた場所は衛星の通り道だった。鳥も、映像の圧縮で形がつぶれ、ぼんやりした「玉」に写ることが多いという[4]。

報告書の要約は、はっきりこう書いている。これまでにAAROは、地球外の生き物、その活動、その技術の証拠を見つけていない。UAPを捕まえたり分析したりしたことを示すデータもない[4]。一方で、軍の乗員からは飛行の安全にかかわる報告が2件、UAPに後をつけられたという報告が3件あり、外国のものかどうかはまだ分からないとしている[4]。

042023年7月の公聴会:「政府は回収している」という証言

報告書が「ありふれたもの」を積み上げていく一方で、議会ではまったく違う話が出た。2023年7月26日、下院監視委員会の小委員会が公聴会を開いた。証人は3人。元海軍パイロットのライアン・グレイブス、元情報将校のデビッド・グラッシュ、2004年に空母ニミッツの艦載機で「チックタック(白いタブレット菓子)」形の物体を見たという元海軍中佐デビッド・フレイヴァーだ[5]。

グレイブスは、2014年当時に所属していた戦闘攻撃飛行隊の体験を話した。バージニア州沖の訓練空域で、透明な球の中に黒っぽい立方体があるような物体が、2機の戦闘機の間を抜けていったと話した。物体は先頭の機体から約50フィート(約15m)まで近づいたという。彼は、民間機の乗員や元軍人30人以上から似た体験を打ち明けられていると述べた[5]。

These sightings are not rare or isolated. They are routine.

こうした目撃は、まれでも孤立したものでもない。日常的に起きている。

いちばん注目されたのはグラッシュだ。彼は国家地球空間情報局(NGA)でUAP分析の共同責任者を務め、2019〜2021年にはUAPタスクフォースの一員だったと名乗った。2022年5月には、政府が議会の監督の外でUAPについて秘密を持っているとして、情報機関の監察官に内部告発をしたという[5]。そして冒頭の陳述でこう述べた。

I was informed in the course of my official duties of a multi-decade UAP crash retrieval and reverse engineering program

私は職務の中で、何十年にもわたるUAPの墜落物回収と、それを分解して技術を調べる計画について知らされた。

政府がUAPを持っていると思うかと問われると、グラッシュは「4年間で40人を超える証人に聞き取りをした結果、間違いない」と答えた。回収物に「生体」があったかとの問いには、計画を直接知る人たちの評価では「人間ではない」と答えた[5]。

ただ、ここで注意したい点がある。グラッシュ自身が冒頭で、自分の証言は「聞かされた事実」にもとづくと断っている。彼はその計画に加わることを求めたが、認められなかったとも述べた[5]。証拠となる文書について聞かれると、機密を扱える部屋(SCIF)でなければ話せないと答えた[5]。公開の場で、回収物そのものや文書は1つも示されなかった。

05AAROの答え:歴史記録報告 第1巻

議会はAAROに、もう一つ仕事を課していた。1945年以降の米政府とUAPのかかわりを、記録をさかのぼって調べることだ。その「歴史記録報告」第1巻は2024年2月付でまとめられ、3月に公開された[6][4]。対象は1945年から2023年10月31日までだ[6]。

AAROのロゴと「Report on the Historical Record of U.S. Government Involvement with Unidentified Anomalous Phenomena (UAP) Volume I February 2024」と書かれた表紙
PDAARO「UAPへの米政府の関与の歴史記録に関する報告 第1巻」(2024年2月)の表紙。右上に2024年3月6日の公開許可の印がある。米連邦政府の著作物で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

AAROは、1945年以降の政府の調査を、数え方にもよるが、およそ20数件と数えた。空軍のプロジェクト・サイン、グラッジ、ブルーブック、CIAが関わったロバートソン委員会、そして近年のUAPタスクフォースまでだ。最も長く続いたブルーブック(1952〜1969年)は、1947〜1969年に1万2,618件の目撃を記録し、うち701件が「未確認」のまま終わった[6]。

報告はまた、回収計画があると主張する人たち、およそ30人に聞き取りをした[6]。議会の職員や議員と話したあとでAAROに紹介された人、その人から紹介された人などだ。12機の宇宙船が回収されている、元軍高官が宇宙船に触った、といった主張を一つずつ調べた[6]。結論はこうだ。

AARO found no empirical evidence for claims that the USG and private companies have been reverse-engineering extraterrestrial technology.

米政府や民間企業が地球外の技術を分解・分析してきたという主張について、AAROは実証的な証拠を見つけられなかった。

中身は具体的だ。宇宙船に触ったとされた元軍人は、本人が否定し、ステルス戦闘機F-117に触った話が誤解されたのかもしれないと話した。宇宙船の破片だとして民間団体と陸軍から持ち込まれた金属は、マグネシウム・亜鉛・ビスマスを主とする、地球で作られた合金だった。ネットに「流出」した1961年の情報評価文書は、本物ではないと判断された[6]。

一方で、すべてが作り話だったわけでもない。聞き取りで名前が出た政府の計画や会社の多くは実在した。ただしそれらは、UAPとは関係のない機密の開発計画だった。国土安全保障省に提案された「コナ・ブルー」という計画は承認されなかった。2021年に十分な理由なく対象を広げられた情報機関の計画も、何も回収しておらず、廃止された[6]。そして報告は、話の出どころについてこう書く。

It is important to note that none of the interviewees had firsthand knowledge of these programs

重要なのは、聞き取りに応じた人の誰一人として、これらの計画を直接知ってはいなかったことだ。

AAROは、回収計画の話の大部分は、同じ考えを持つ限られた人たちの間で話が回り続けた「循環報告」の結果だと評価した[6]。ただし、話している人がうそをついていると決めつけてはいない。報告は、証言の「誠実さ」と「確かさ」を分けて考える。

A person who reports a case might be credible, in that they believe the elements of their account to be accurate. However, their reliability, which is their ability to accurately interpret events

事例を報告する人は、自分の話の中身が正確だと信じているという意味では、信用できるかもしれない。しかし、その人の確かさ、つまり出来事を正しく読み取る力は、

報告は、この「確かさ」は本人の誠実さとはまったく別のものだ、と続ける。記憶の思い違いや、自分の考えに合う話ばかり信じてしまう「確証バイアス」もある、という[6]。

この報告は、公聴会の証人の名前を挙げて反論したものではない。扱っているのは「政府が墜落機を回収し、議会に隠している」という同じ型の主張だ。報告は、新しい確かな情報があれば結論を見直すとし、残りの主張は第2巻で扱うとしている[6]。

06NASAの独立調査チーム:まずはデータを

軍や情報機関とは別に、科学の側からもUAPを調べる動きがあった。NASAは2022年6月9日、UAPを科学の立場から調べる独立調査チームを作ると発表した[8]。メンバーは科学、データ、人工知能、航空の安全などの専門家16人で、議長はシモンズ財団の理事長デビッド・スパーゲルが務めた[7][6]。2023年5月31日には公開の会合を開き、AAROの局長だったショーン・カークパトリックも説明に立った[8][7]。

演台で話すスパーゲル議長と、長机に並んで座る調査チームのメンバー
PD2023年5月31日に開かれたUAP独立調査チームの公開会合。演台で話すのが議長のデビッド・スパーゲル。撮影:NASA/Joel Kowsky。パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons
演台でマイクに向かって話すカークパトリック局長
PD同じ会合で説明するAAROのショーン・カークパトリック局長(当時)。撮影:NASA/Joel Kowsky。パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

最終報告は2023年9月14日に出た[8]。NASAの序文は、これは過去のUAP事例を見直すものではなく、これからどうデータを集めるかの道筋を示すものだと断っている[7]。そのうえで、今の状態をこう書いた。

the absence of consistent, detailed, and curated observations means we do not presently have the body of data needed to make definitive, scientific conclusions about UAP.

一貫した、詳しい、きちんと整理された観測がないため、UAPについて科学的にはっきりした結論を出すのに必要なデータが、今のところそろっていない。

宇宙から見た地球の弧と「NASA Unidentified Anomalous Phenomena Independent Study Team Report」の文字
PDNASA「未確認異常現象 独立調査チーム報告」(2023年9月)の表紙。米連邦政府の著作物で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

地球外から来たのかという問いにも、報告は触れている。地球外の生命は「最後に残った説明」として扱うべきもので、ほかの可能性をすべて消してから考えるものだ、という立場だ[7]。

To date, in the peer-reviewed scientific literature, there is no conclusive evidence suggesting an extraterrestrial origin for UAP.

これまでのところ、査読を経た科学文献の中に、UAPが地球外から来たことを示す決定的な証拠はない。

報告の勧めは、地道なものだった。複数の、きちんと調整されたセンサーで観測すること。NASAの地球観測衛星や民間の高解像度衛星で、UAPが見えた時の周りの環境を調べること。パイロットが匿名で報告できる「航空安全報告システム(ASRS)」をUAPにも生かすこと。このシステムには年に約10万件の報告が届いている。スマートフォンのアプリで、多くの市民から同時に画像やセンサーのデータを集める仕組みも検討するよう勧めた[7]。

報告は「偏見」の問題にも何度も触れている。調査チームの科学者の中には、参加しただけで同僚から嫌がらせのメールを受け取った人もいたという[7]。NASAが関わること自体が、報告しにくさを和らげる、というのが報告の考えだ。この点は、2021年の予備評価や議会でのグレイブスの訴えとも重なる。

07何が分かり、何が残っているか

説根拠評価
報告の多くは、ふつうの物の見間違い2022年版では新規366件の半分以上が気球・ドローンなど。2024年版で解決したものはすべてありふれた物だった[2][4]有力
正体不明が多いのは、主にデータ不足のせい予備評価から2024年版まで、どの報告書もデータの量と質の不足を挙げている[1][3]有力
一部のUAPは、説明のつかない飛び方をした18事例で異常な動きの報告。2024年版でも21件が要分析。ただし機器の誤りや見誤りの可能性が残る[1][4]確かめられず
UAPは飛行の安全にかかわる問題だ予備評価でニアミス11件。各報告書が安全上の課題と位置づける[1]有力
外国の偵察機・ドローンが含まれるUAP報告を外国の活動と特定した例は示されていない。調査は続く。中国の高高度気球の特定にUAPTFの手法が役立ったとの記述はある[3][6]確かめられず
地球外の技術や生命の証拠があるAAROは証拠なし、NASAも査読文献に決定的証拠なしとした[4][7]否定的
政府が墜落機を回収し、隠している公聴会で証言はあったが証拠は公開されず、AAROは実証的証拠なしと結論[5][6]否定的

公文書を順に読むと、流れは一本だ。2021年、報告の仕組みがやっと整い始めた時点で、政府は「ほとんど何も分からない」と認めた。報告の数が増え、データが集まるにつれ、正体が分かったものは気球、鳥、ドローン、人工衛星へと落ち着いていった。分からないものは今も数百件残るが、その多くは「分析できるだけのデータがない」ものだ。

一方で、議会の公聴会に出てきた「回収計画」の話は、公文書の流れとは別の場所から来ている。証言者が直接見たものではなく、人から聞いた話の積み重ねだった。AAROは、その計画を裏づけるものは見つからなかったと書いた。ただ、AAROの結論は「今ある情報では」という前提つきで、第2巻も予定されている。分からないものが残る限り、問いは続く。その答えを出せるのは、証言の数ではなく、よいデータだ、というのが、ODNIからNASAまでの報告書に共通する考え方だ。

資料について:dni.gov、defense.gov、aaro.mil は取得の段階でアクセスを拒否されたため、ODNI 予備評価(2021)、2022年版年次報告、2023会計年度報告、AARO 歴史記録報告 第1巻、NASA 独立調査チーム報告は、Wikisource の翻刻で引用を照合した。2024会計年度報告は Wikisource に翻刻がなく、Internet Archive が2024年11月14日に保存した国防総省サイトの PDF で内容を確かめた。PDF のため引用箇所へ直接飛ぶリンクは作れず、この報告からは原文を引用せず、事実の紹介にとどめた。資料どうしの食い違いもある。2023会計年度報告は、期間外の追加報告の数を要約で「7件」、本文で「17件」と書いている(274件+17件=291件なので本文が合う)。2024会計年度報告は、解決した件数を要約で「118件、ほかに174件が最終承認待ち」、本文で「49件、ほかに243件が確認待ち」と書いている(合計はどちらも292件。時点の違いとみられる)。AAROの発足日は、2022年版年次報告では2022年7月20日、歴史記録報告では7月15日となっている。2022年版の議会提出日(2023年1月12日)は、歴史記録報告の記述による。歴史記録報告の第2巻は、この記事では確かめられなかった。グラッシュの証言の中身(回収計画の場所や証人)は、本人が監察官や議会の情報委員会に伝えたとしているが、公開の資料では確かめられなかった。

出典・参考資料

  1. Office of the Director of National Intelligence「Preliminary Assessment: Unidentified Aerial Phenomena」2021年6月25日(Wikisource の翻刻). https://en.wikisource.org/wiki/Preliminary_Assessment:_Unidentified_Aerial_Phenomena(閲覧 2026-10-04)↩
  2. Office of the Director of National Intelligence「2022 Annual Report on Unidentified Aerial Phenomena」2023年1月12日議会提出(Wikisource の翻刻). https://en.wikisource.org/wiki/2022_Annual_Report_on_Unidentified_Aerial_Phenomena(閲覧 2026-10-04)↩
  3. Office of the Director of National Intelligence / Department of Defense「Fiscal Year 2023 Consolidated Annual Report on Unidentified Anomalous Phenomena」2023年10月(Wikisource の翻刻). https://en.wikisource.org/wiki/Fiscal_Year_2023_Consolidated_Annual_Report_on_Unidentified_Anomalous_Phenomena(閲覧 2026-10-04)↩
  4. Department of Defense, All-domain Anomaly Resolution Office「Fiscal Year 2024 Consolidated Annual Report on Unidentified Anomalous Phenomena」情報締切 2024年6月1日(国防総省サイトの PDF。Internet Archive の 2024年11月14日保存版で確認). https://web.archive.org/web/20241114183508/https://media.defense.gov/2024/Nov/14/2003583603/-1/-1/0/FY24-CONSOLIDATED-ANNUAL-REPORT-ON-UAP-508.PDF(閲覧 2026-10-04)↩
  5. U.S. House, Committee on Oversight and Accountability, Subcommittee on National Security, the Border, and Foreign Affairs「Unidentified Anomalous Phenomena: Implications on National Security, Public Safety, and Government Transparency」2023年7月26日, Serial No. 118-53(govinfo の本文版). https://www.govinfo.gov/content/pkg/CHRG-118hhrg53022/html/CHRG-118hhrg53022.htm(閲覧 2026-10-04)↩
  6. All-domain Anomaly Resolution Office(米国防総省)「Report on the Historical Record of U.S. Government Involvement with Unidentified Anomalous Phenomena (UAP), Volume I」2024年2月付、2024年3月6日公開許可(Wikisource の翻刻). https://en.wikisource.org/wiki/Report_on_the_Historical_Record_of_U.S._Government_Involvement_with_Unidentified_Anomalous_Phenomena/Volume_1(閲覧 2026-10-04)↩
  7. NASA「Unidentified Anomalous Phenomena: Independent Study Team Report」2023年9月14日(Wikisource の翻刻). https://en.wikisource.org/wiki/NASA_Unidentified_Anomalous_Phenomena:_Independent_Study_Team_Report(閲覧 2026-10-04)↩
  8. NASA Science「Unidentified Anomalous Phenomena」(独立調査の経緯・公開会合・最終報告の案内ページ). https://science.nasa.gov/uap/(閲覧 2026-10-04)↩

この記事は、公開されている資料をもとに編集部が書いています。引用した文章と画像は、出典と引用元へのリンクを添えています。英語の資料の訳は当サイトによるものです。誤りに気づいた方は、目撃情報フォームからお知らせください。