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連載科学で検証検証

科学で検証する 第4回
写真と映像を確かめる

写真や映像は、目撃談よりも強い証拠に見える。だが、写真が「本物」であることと、写っているものが「見た目どおり」であることは、別の問題だ。第4回は、妖精の写真から米海軍の赤外線映像まで、名高い写真と映像がどう調べられてきたかをたどり、確かめるための道具を一つずつ見ていく。

文 未確認生物研究所 編集部公開 2026年10月4日約20分で読めます出典 17件
農家の納屋と電柱のある曇り空に、円盤のような物が浮かんで写っている白黒写真
PD1950年5月11日、米オレゴン州マクミンビル近くの農場で撮られた「トレント写真」の1枚目。プリントを調査者ロバート・シェーファーがスキャンしたもの。撮影:ポール・トレント。Wikimedia Commons ではパブリックドメインとして扱われている。 / Wikimedia Commons

この記事の要点

  • 写真の検証には二つの問いがある。「写真が加工されていないか」と「写っている場面が見た目どおりか」。妖精の写真は前者に合格し、後者で崩れた
  • マクミンビルの円盤写真は、米政府の委託研究(コンドン報告)でも結論が割れた。電線の下の同じ位置に写る点は、吊るした模型でも説明がつく
  • 米海軍の映像は、カメラを積んだ機体そのものが速く動いている。NASAは「GoFast」の物体を高度約4,000メートル、時速約40マイル(約64キロ)と計算し、速く見えるのは視差のせいだとした
  • 撮影情報、圧縮のむら、影の向きなどの道具は、どれも「怪しい点」を見つけるもので、本物の証明にはならない。生成画像の見分けは、専門の道具でも追いかけっこが続いている

01写真には、二つの問いがある

第1回の目撃談を確かめる5つの手順では、手順4で「写真と映像は、作り物を疑う」と書いた。撮影情報を見る、逆画像検索にかける、切り取りを疑う、カメラのくせを知る。今回はそこをもっと深く掘る。

写真を確かめるとき、問いは二つある。一つは「この写真は、あとから加工されていないか」。もう一つは「写っている場面は、見た目どおりのものか」だ。

この二つは、よく混同される。だが、まったく別の問いだ。加工のない写真でも、カメラの前に置いた紙の人形は、紙の人形のまま正直に写る。逆に、本物の何かを撮った写真でも、明るさを調整しただけで「加工あり」と判定されることがある。

以下では、まず有名な写真と映像を4つ取り上げ、それぞれがどう調べられ、どこで意見が割れたのかを見る。そのあとで、確かめるための道具を一つずつ整理し、最後に生成画像の問題を考える。

02鑑定に合格した妖精:コティングリーの写真

英国の雑誌ストランドに載った、コナン・ドイルの記事「Fairies Photographed」の最初のページ
PD『ストランド・マガジン』1920年12月号に載ったアーサー・コナン・ドイルの記事「Fairies Photographed」の最初のページ(463ページ)。右の段に、写真家スネリングらが写真を本物と判断したことが書かれている。Wikimedia Commons ではパブリックドメインとして扱われている。 / Wikimedia Commons

1917年7月、英国ヨークシャーのコティングリー村で、エルシー・ライトといとこのフランシス・グリフィスが、家の近くの小川で「妖精」の写真を撮った。同じ年の秋には、エルシーと小人(ノーム)の写真も撮った。父親は子どものいたずらだと考え、写真はしまわれた[1][3]。

1919〜20年ごろ、母親が神智学(神秘主義の一派)の集まりで写真のことを話し、指導者の一人エドワード・ガードナーの目に留まった。ガードナーは写真家のハロルド・スネリングに鑑定を頼んだ。スネリングの答えは、こうだったという[1]。

genuine unfaked photographs of single exposure, open-air work, show movement in all the fairy figures, and there is no trace whatever of studio work involving card or paper models

本物の、ごまかしのない写真だ。1回の露光で、屋外で撮られている。妖精の姿はどれも動きを見せており、厚紙や紙の模型を使ったスタジオ作業の跡はまったくない。

この鑑定を受けて、シャーロック・ホームズの作者アーサー・コナン・ドイルが写真を取り上げ、1920年12月の『ストランド・マガジン』で本物だと論じた[1]。ガードナーは2人に新しいカメラを渡し、すり替えを見破るための印をこっそり付けた乾板(ガラスのフィルム)を使わせた。2人はその年の8月に、さらに3枚を撮った[2]。

答えは、カメラの外にあった

布をなびかせて踊る、羽のある3人の妖精を描いたペン画
PD『プリンセス・メアリーズ・ギフト・ブック』に載った、アルフレッド・ノイズの詩「A Spell for a Fairy」の挿絵。画:クロード・A・シェパーソン(1867〜1921)。Wikimedia Commons ではパブリックドメインとして扱われている。 / Wikimedia Commons

謎がほどけたのは、写真の分析からではなかった。1978年、奇術師で懐疑論者のジェームズ・ランディが、写真の妖精が子ども向けの本『プリンセス・メアリーズ・ギフト・ブック』の挿絵によく似ていると指摘した[1]。博物館の説明でも、フランシスはこの本を持っていて、2人は挿絵をもとに自分たちの妖精を作ったとされる[2]。

作り方は単純だった。絵の得意なエルシーが妖精を描いて切り抜き、帽子ピンで地面や枝に留めて撮った[3][2]。小人の写真では、体の真ん中に帽子ピンの先が写っている。ドイルはこの点を見ていたが、へそだと解釈したという[1]。

つまり、スネリングの鑑定は、ある意味で正しかった。写真は1回の露光で、屋外で撮られていた。合成も修整もなかった。ごまかしは、写真の中ではなく、カメラの前にあった。印を付けた乾板も、すり替えは防げても、紙の妖精は防げない。

1983年の手紙と、5枚目の写真

草むらの中に、薄い布のようなものと、ぼんやりした人の形がいくつか写った白黒写真
PD5枚目の写真(1920年8月)。妖精が日光浴をしているとされた。2人の意見が晩年まで食い違った、ただ1枚の写真。Wikimedia Commons ではパブリックドメインとして扱われている。 / Wikimedia Commons

2人は60年以上、本当のことを言わなかった。1983年、エルシーは写真雑誌に検証記事を連載していた記者ジェフリー・クローリーに手紙を書き、真相を自分の言葉で明かした[2][3]。1985年のインタビューでは、ドイルのような人をだましてしまったあとでは恥ずかしくて言えなかったと話している。フランシスは同じインタビューでこう語った[3]。

I never even thought of it as being a fraud – it was just Elsie and I having a bit of fun and I can’t understand to this day why they were taken in – they wanted to be taken in.

あれを詐欺だなんて思ったこともない。エルシーと私がちょっと遊んだだけ。どうしてみんながだまされたのか、今でも分からない。みんな、だまされたかったのよ。

ただし、話はきれいに終わらない。5枚目の写真について、フランシスは亡くなるまで本物だと言い続けた。一方、エルシーはクローリーへの手紙で、5枚すべてが作り物だと書いている[2]。本人たちの言葉でさえ、最後まで一つにそろわなかった。

この事件から学べるのは、「専門家が写真を見て本物と言った」ことの意味の限界だ。鑑定できるのは、たいてい写真そのものの加工の有無までで、写っている物が何なのかまでは保証しない。

03写真の外の手がかり:外科医の写真

1934年のネッシーの「外科医の写真」は、新聞に出たとき、周りを大きく切り落とされていた。第1回では、この切り取りが大きさの手がかりを消したことを紹介した。ここでは、別の角度から見る。この写真の真相に近づく手がかりもまた、写真の中ではなく、写真の外にあった。

調査者のアラスター・ボイドは、1980年代の終わりに、切り取る前の全体の写真を見つけ出していた。全体の写真には、ネス湖の対岸が少し写っている。この版が新聞に載ったのは、1934年に一度だけだった[4]。

その後、ボイドの友人デイヴィッド・マーティンが、1975年の古い新聞記事を見つけた。映画制作者マーマデューク・ウェザレルの息子イアンが、あの写真は作り物で、背景にはネス湖の景色も入れたと語っていた。ボイドは、ほとんど誰も見たことのない全体の写真の中身を、なぜイアンが知っていたのかに気づいた[4]。

Either he had a very long memory, or he took the picture,

よほど記憶力がいいか、自分で撮ったかのどちらかだ。

ボイドとマーティンは、ウェザレルの義理の息子クリスチャン・スパーリングにたどり着き、おもちゃの潜水艦に首を付けた模型の話を聞いた。写真を新聞社に売ったのは外科医のウィルソンだったが、それはウェザレルが自分の関与を隠すためだった、というのがこの告白の筋書きだ。ただし、1930年代のおもちゃの潜水艦で本当にそれができたのかを疑う声もある[4]。告白の中身と、それを疑う声は外科医の写真の記事で詳しく検証した。

ここでの教訓は二つある。一つは、切り取る前の元の写真がどれほど大事か。もう一つは、写真が誰の手を通って世に出たのかという来歴だ。写真そのものをいくら拡大しても、誰が撮ったのかは写っていない。

04分析しても割れる:マクミンビルの円盤

1950年5月11日の夕方、米オレゴン州マクミンビル近くの農場で、トレント夫妻が空に浮かぶ円盤を見たと言い、夫のポールが2枚の写真を撮った。写真は6月に地元紙に載り、続いて写真誌『ライフ』にも載った[5]。

1968年、米空軍の委託でコロラド大学がまとめたUFOの調査報告(いわゆるコンドン報告)で、天文学者ウィリアム・ハートマンがこの2枚を詳しく調べた。ハートマンは元のネガを探し出し、修整の跡がないことを確かめた。2枚に写った円盤の形を比べると、同じ物を別の角度から見たものと矛盾しない。円盤のてっぺんの突起の位置から、回転はしていないと判断し、手で放り投げた円盤形の模型である可能性は低いとした[5]。

電線の下の、同じ場所

白っぽい空に、傾いた楕円形の暗い物体が一つ写っている拡大写真
PDトレント写真1枚目の、円盤の部分の拡大。プリントをロバート・シェーファーがスキャンしたもの。撮影:ポール・トレント。Wikimedia Commons ではパブリックドメインとして扱われている。 / Wikimedia Commons

一方で、ハートマンは都合の悪い点も書いている。円盤は、写真の上を横切る電線の下に写っている。しかも、撮影者が右に動いて撮ったはずの2枚で、円盤は電線のほぼ同じ点の真下にある。電線の小さなよじれで比べると、2枚目では円盤が約8%、電線が約10%遠くなっていた。ハートマンは、見えない糸で電線から吊るした小さな模型の可能性は、これらの検査では消せないと書いた[5]。

光の向きにも問題があった。円盤も、電柱も、遠くの家の破風も、右(東)から照らされているように見える。家の軒下には、昼間の写真のような影がある。本人たちの言う午後7時半ごろなら、日はもう西に沈んでいる。ハートマンは、これだけなら「午前10時ごろの薄日の写真」とも読めると認めつつ、雲の具合で北東からの散らばった光になった可能性もあるとした[5]。

空気のかすみで、距離を測る

ハートマンが最後に頼ったのは、空気のかすみだ。遠くの物ほど、間の空気に光が散らされて、空の明るさに近づく。遠くの山がかすんで見えるのと同じ理屈だ。ネガの濃さを測る機械(デンシトメーター)で、距離の分かっている納屋や丘や家と比べ、円盤の影になった底の面が妙に明るいことから、円盤は約1.3キロ先にあると見積もった[5]。

見かけの大きさは、1枚目で約1.4度だった[5]。腕を伸ばした小指の幅(約1度)より少し大きいくらいだ。1.3キロ先なら直径は30メートルほどになる。だが、5メートル先なら12センチほどの物でも同じ大きさに写る(数字は編集部の計算)。どちらなのかを決めるのは、写真の外の手がかりしかない。ハートマンの結論は、こうだった[5]。

This is one of the few UFO reports in which all factors investigated, geometric, psychological, and physical appear to be consistent with the assertion that an extraordinary flying object, silvery, metallic, disk-shaped, tens of meters in diameter, and evidently artificial, flew within sight of two witnesses.

これは、調べた要素のすべて(幾何学的、心理的、物理的な要素)が、銀色で金属的な円盤形の、直径数十メートルの、明らかに人工の、並外れた飛行物体が、2人の目撃者の見える所を飛んだという主張と矛盾しないように見える、数少ないUFO報告の一つだ。

この一文は、UFOを本物と考える人たちに今もよく引かれる。だが、すぐ後に「証拠が捏造を確実に否定しているとは言えない」とも書かれている[5]。

懐疑派の調査者ロバート・シェーファーは、別の見方をする。影の付き方は朝なら普通で、本人たちの言う夕方にはありえないと言う[6]。

UFOlogists claim that the illumination in the Trent photos (normal for the morning, but a physical impossibility for an evening shot, as the witnesses claim) was caused by very bright clouds reflecting the sun.

UFO研究家たちは、トレント写真の光の当たり方(朝なら普通だが、目撃者の言う夕方の撮影なら物理的にありえない)は、太陽を反射したとても明るい雲のせいだと主張している。

シェーファーは、米気象局の記録ではその晩に雲はなかったとし、物体は古いトラックのミラーではないかという別の調査者の説や、物体は小さくカメラの近くにあり、吊るす糸まで測光で検出したと主張するフランスの調査も紹介している。さらに、自分の1969年の論文を受けて、ハートマンが結論を考え直したとも書いている[6]。

同じ2枚の写真から、同じくらい真剣な分析が、正反対の方向を指す。マクミンビルの写真が教えるのは、写真だけでは決着しないことがある、という事実だ。そのとき必要なのは、撮影の前後に何があったかという、写真の外の記録になる。

05動いているのはカメラかもしれない:米海軍の映像

赤外線カメラの白黒映像。雲の上に黒い楕円形の影が一つあり、周りに照準と数字が表示されている
PD米海軍の赤外線映像「GIMBAL」の1コマ(2015年1月撮影)。米海軍の映像で、パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

米海軍の戦闘機が撮った赤外線の映像が、許可なく外に出回っていた。2020年4月27日、米国防総省は、2004年11月の1本と2015年1月の2本、計3本の映像を正式に公開した。これらの映像は2007年と2017年に、許可なく外に出ていたものだという。国防総省は、出回っている映像が本物かどうかの誤解を解くために公開するとし、こう書いた[7]。

The aerial phenomena observed in the videos remain characterized as "unidentified."

映像に写った空中の現象は、引き続き「未確認」と位置づけられている。

映像は今も、米海軍航空システム司令部の情報公開のページから見られる[8]。「未確認」は、第1回で書いたとおり、「説明できない異常」と同じ意味ではない。では、映像の中で何が起きているのか。

GoFast:高度と速さを計算すると

GoFast映像の1コマに番号を付けた図と、機体と物体と海面の位置関係の図、上から見た両者の動きの図
PDNASAの報告書に載ったGoFast映像の分析。左:画面に表示された数字(1:カメラの俯角、3:物体までの距離、4:機体の高度など)。中:横から見た機体・物体・海面の位置関係。右:上から見た22秒間の動き。NASA「UAP Independent Study Team Report」(2023年)28ページより。パブリックドメイン。 / Wikimedia Commons

「GoFast」と呼ばれる映像では、小さな物体が海面すれすれを猛スピードで飛んでいくように見える。2023年、NASAの独立研究チームは報告書で、この映像を例に取り上げた。画面の隅には、カメラの向き、物体までの距離、機体の高度などの数字が表示されている。これを三角法で解くと、物体は海面すれすれではなく、高度約13,000フィート(約4,000メートル)にあり、背後の海から4.2マイル(約6.8キロ)離れていた[9]。

Given that the aircraft’s groundspeed is about 435 mph, we may conclude that the impression of rapid motion is at least partly due to the high velocity of the sensor, coupled with the parallax effect.

機体の対地速度が時速約435マイルであることを考えると、速く動いているという印象は、少なくとも一部は、センサー(カメラ)自体の速い動きと、視差の効果によるものだと結論できる。

さらに、22秒間の始めと終わりの距離と方向から、物体は約390メートル動いただけで、平均の速さは時速約40マイル(約64キロ)と計算された。高度13,000フィートでは、ふつうの風の速さだ。画面の表示の設定から、物体は海より冷たく、エンジンの熱の証拠もない。報告書は、風に流されている可能性が高いとしつつ、機体にかかる風を無視した計算なので不確かさはあり、追加のデータがあればもっと確かな結論が出せると書いている[9]。

速く進む機体から、ほとんど動かない物を見ると、その後ろの海面がカメラの中で大きく流れることを示す模式図
図解運動視差の模式図。カメラが物を追い続けると、物は画面の中央にとどまり、後ろの海だけが流れる。見る側には、物が海の上を突っ走っているように見える。図:編集部作成。

GIMBAL:回るのは物体か、カメラか

「GIMBAL」の映像では、黒い影のような物体が、途中でくるりと傾くように回る。この回転を、物体そのものの不思議な動きと見る人は多い。

これに対し、米国の懐疑派の研究者ミック・ウェストは、写っているのは物体そのものではなく、熱い物(たとえば遠くの飛行機のエンジン)が赤外線カメラの中に作るグレア(光のにじみ)だと考えた。グレアはカメラの光学系の中で生まれるので、カメラの向きと一緒に回る。ウェストは、その根拠の一つとしてこう書いている[10]。

When the plane increases bank at 8 and 19 seconds, the horizon rotates with the plane, but the glare does not rotate - indicating it's fixed to the camera frame of reference, not the object.

8秒と19秒で機体が傾きを深めると、地平線は機体と一緒に回るが、グレアは回らない。これは、グレアが物体ではなくカメラの座標に固定されていることを示している。

ウェストはほかにも、物体が回る直前にカメラの画面がわずかに揺れること、回るタイミングがカメラの台座(ジンバル)が向きを大きく変える必要のある角度と合うことなどを挙げた。映像の名前が「GIMBAL」であることにも触れている[10]。

ただ、同じスレッドの中でも反論は出ている。別の参加者は、グレアの例として挙げられた別の映像の冒頭が本当にグレアなのかは証明されていないこと、雲や計器の表示から地平線の傾きを決めるのは微妙なことを指摘した[10]。グレア説はかなり有力な説明だが、フォーラムでの議論と再現が中心で、公的な結論として示されたものではない。この記事では「確かめられず」に置く。

プエルトリコの映像:海に潜った物体

2013年4月26日、プエルトリコのアグアディヤ空港の上空で、米税関・国境警備局の航空機が赤外線の映像を撮った。物体は猛スピードで飛び、二つに分かれ、海に入ったり出たりしたように見えた[11]。民間の研究団体SCU(UAP研究のための科学連合)は、時速100マイルを超える速さで、水中と空中を行き来したと分析していた[12]。

2025年3月、米国防総省でUAPを調べる全領域異常解決局(AARO)は、この映像の解決報告を出した。機体の位置とカメラの角度から物体の通り道を再現すると、2つの物体が時速約8マイル(約13キロ)で、風と同じ向きに陸の上をまっすぐ漂っていただけだったという。速く見えた理由を、報告はこう説明する[11]。

Motion parallax is an optical effect that induces an observer to perceive that a stationary or slow-moving object is moving much faster than its actual speed when viewed from a moving frame of reference.

運動視差とは、動いている所から見たときに、止まっている物やゆっくり動く物が、実際よりずっと速く動いていると感じさせる、目の錯覚の効果だ。

「海に潜った」ように見えたのは、日没後2時間ほどのあいだ、物と背景の温度差が小さくなって赤外線カメラで見分けにくくなる「熱のクロスオーバー」のためだとした。物体が電柱の向こうを通ったように見える場面も、画素を細かく調べると電柱の後ろは通っていなかった。正体は、地元のホテルなどが祝いの場で飛ばすスカイランタン(熱気球の灯籠)だと「中程度の確信」で結論している。映像の質が悪いので、正体の断定まではできないとも書いている[11]。

GoFast とプエルトリコの例に共通するのは、撮っている側が動いていることだ。動く飛行機から撮った映像では、まず機体の動きを差し引かなければ、物の本当の動きは分からない。そのためには、映像に重ねて表示された数字や、機体の記録が欠かせない。

06確かめる道具箱

ここからは、個人でも使える確かめ方を整理する。どれも「怪しい点」を見つけるための道具で、一つで白黒がつくものはない。

撮影情報(Exif)は、消えるし、書き換えられる

デジタル写真には、撮影日時、カメラの機種、露出、ときには位置情報などの撮影情報(Exif)が入っている。目撃談の日時と場所を確かめる手がかりになる。だが、米国立標準技術研究所(NIST)の2024年の報告は、ファイルの中の付帯情報は、ファイルを写したり編集したりする人が書き換えたり偽ったりでき、SNSなどで共有するときにはまるごと消されることが多いと書いている[15]。

つまり、撮影情報が「ない」ことは怪しさの証拠にならないし、「ある」ことも本物の証明にはならない。撮った人から元のファイルをもらい、撮影情報の日時と、写真に写った影の向きや空の明るさが合っているかを突き合わせる。マクミンビルの写真で問題になったのも、言われた時刻と光の向きの食い違いだった[5]。

圧縮のむら(ELA)

JPEGの写真は、画像を8×8画素の小さな区画に分けて圧縮している。一度保存した写真を同じ条件でもう一度保存すると、区画ごとの「劣化の余地」の差が見える。これを画像にしたのがエラーレベル解析(ELA)だ。解析サービスのFotoForensicsは、原理をこう説明する[14]。

If a section of the image is at a significantly different error level, then it likely indicates a digital modification.

画像の一部だけが大きく違うエラーレベルにあるなら、それはデジタルの加工を示している可能性が高い。

ただし、同じ解説は限界も書いている。保存し直すほど差は小さくなり、とても低い画質の写真は全体が暗くなる。縮小すると輪郭が明るく出る。画像編集ソフトで保存すると、輪郭や細かい模様が強調されて明るく見える。そもそもELAはJPEG用で、色数を減らした形式には使えない[14]。SNSを何度も通って縮小と再保存を繰り返した写真では、ほとんど何も読み取れない。

そして、コティングリーの妖精は、ELAにかけても何も出ないはずだ。紙の人形をカメラの前に置いた写真は、写真としては無加工だからだ。

影と光の向き

一つの太陽に照らされた場面なら、影はすべて同じ光源と矛盾しない向きにできる。米ダートマス大学のハニー・ファリドらは、物の陰影(明るい面と暗い面)と、地面に落ちた影の両方から、光源のありうる位置を割り出す方法を2014年に発表した[13]。

A feasible solution indicates that the combination of shading and shadows is physically consistent, while a failure to find a solution provides evidence of photo tampering.

解が見つかれば、陰影と影の組み合わせは物理的に矛盾しない。解が見つからなければ、それは写真が改ざんされた証拠になる。

専門のソフトがなくても、考え方は使える。写真の中の電柱、木、建物の影の向きを線で延ばし、問題の物体の明るい面がそれと合うかを見る。合わなければ、合成か、別の時刻に撮った物を疑う。ただし、合うからといって本物とは限らない。吊るした模型も、同じ太陽に照らされれば、同じ向きの影ができる。

大きさと距離は、角度から考える

写真から分かるのは、物の「見かけの大きさ」、つまり角度だけだ。マクミンビルの例で見たように、同じ1.4度は、遠くの大きな物にも、近くの小さな物にもなる。距離を決めるには、物の手前や奥にある、距離の分かった物との位置関係が必要になる。AAROがプエルトリコの映像で使った「ピクセル解析」も、大きさの分かっている物と比べて物の大きさを見積もる方法だ。AAROはこれで物体を1メートル未満と見積もったが、ピクセル解析だけでは高度や通り道は決められないとも書いている[11]。

前にも出ていないか(逆画像検索)

「昨夜撮った」とされる写真が、何年も前に別の場所で出ていた例は多い。画像そのものを検索にかける逆画像検索は、調査報道グループのベリングキャットも勧めている[17]。使い方は第1回で紹介した。切り取りや左右反転、色の調整で引っかかりにくくなることもあるので、何種類かのサービスで試す。

07生成画像の時代に

画像を作る人工知能が広まり、写真のように見える画像を誰でも数秒で作れるようになった。UFOや未確認生物の「写真」も例外ではない。では、生成された画像は見分けられるのか。

NISTの2024年の報告は、自動で見分ける方法について、厳しい見方を示している[15]。

Automated detection methods reflect a constant cat-and-mouse game between the detection and generation communities.

自動検出の方法は、検出する側と生成する側の、絶え間ないいたちごっこを映している。

同じ報告によれば、新しい検出法ができると生成の側も進歩し、検出器は特定の生成方式にしか効かないことが多い。人の目による見分けも頼りにならない。音声、画像、動画を人が見分ける2024年の研究では、成績は当てずっぽうに近かったという。さらに、写真の一部だけを人工知能で消したり描き足したりした画像では、大部分が本物なので、「生成画像かどうか」という問い自体があいまいになる[15]。

「指の数がおかしい」「文字が崩れている」といった見分け方は、ある時期の生成画像には当てはまったが、生成の技術が進むほど、人の目での見分けは難しくなる[15]。見た目のくせ探しより、これまで見てきた確かめ方のほうが長く使える。誰が、いつ、どこで撮ったのか。元のファイルはあるか。同じ時刻の別の写真や映像はあるか。

来歴を記録するしくみ

見分けるのではなく、最初から「どこで、どう作られ、どう編集されたか」を記録しておく取り組みもある。業界団体のC2PAは、デジタルの写真や映像の出どころと編集の履歴を記録する公開の技術規格「コンテンツ・クレデンシャル」を作り、食品の栄養成分表示のようなものだと説明している[16]。

ただ、これも万能ではない。NISTの報告が書くとおり、付帯情報は共有の途中で消えることが多い[15]。来歴の記録があれば強い手がかりになるが、記録がないことだけで偽物とは言えない。結局、最後に頼れるのは、撮った人と、元のファイルと、写真の外の記録だ。

08判定と、写真を受け取ったときのチェックリスト

ここまでの事例と道具をまとめる。

説根拠評価
コティングリーの妖精写真は作り物本人が1983年に手紙で明かし[2]、妖精は1910年代の本の挿絵とよく似ている[1]。ただし5枚目だけは、フランシスが本物と言い続けた[2]有力
ネガや元データが無加工なら、写っている物も本物コティングリーの写真は1回露光・屋外撮影と鑑定された[1]。マクミンビルもネガに修整はなかったが、吊るした模型の可能性は残った[5]否定的
マクミンビルの写真は、直径数十メートルの飛行物体測光では約1.3キロ先と見積もられた一方、電線の同じ点の下に写り、模型の可能性を消せない[5]。光の向きを朝の光と見る反論もある[6]確かめられず
海軍の映像の「高速」は、物体の本当の速さGoFastは計算で時速約40マイル、速く見えるのは機体の速さと視差のため[9]。プエルトリコの映像も風速で漂っていたとされた[11]否定的
GIMBALの回転は、物体自体の動きカメラのグレアが回っているという説明には具体的な根拠がある[10]。ただし公的な結論ではなく、反論もある確かめられず
ELAなどの解析ツールで、本物かどうか決まるELAは再保存や縮小で結果が変わり、JPEG以外には使いにくい[14]。影の分析も、合うことは本物の証明にならない[13]否定的
生成画像は、よく見れば見分けられる自動検出はいたちごっこで、人の判定も当てずっぽうに近いという研究がある[15]否定的

最後に、UMAやUFOの写真・映像を受け取ったときに確かめることを並べる。第1回の「目撃したときのチェックリスト」と合わせて使ってほしい。

  • 元のファイルを手に入れる:SNSの画像は縮小と再保存で情報が落ちている。撮影情報も消えていることが多い[15]
  • 切り取る前の全体を求める:周りの景色が、大きさと距離と来歴の手がかりになる[4]
  • 誰の手を通ってきたかを書き出す:撮った人、最初に載せた人、広めた人。写真の外の記録を集める
  • 言われた日時と、光の向きを突き合わせる:影の向き、空の明るさ、太陽の位置が、撮影時刻と合うか[5]
  • 近くの物との位置関係を見る:電線や木の下に、同じ位置で写り続けていないか[5]
  • 撮っている側が動いていないか:飛行機や車から撮った映像なら、まず撮影者の動きを差し引く[9][11]
  • 画面の数字を読む:軍の映像や監視カメラの表示には、角度・距離・時刻が出ていることがある[9]
  • 解析ツールの結果を「証拠」と言わない:ELAなどは怪しい場所の目印にとどまる[14]
  • 逆画像検索を複数のサービスで試す:前にも出ていないか[17]
  • 生成画像かどうかを見た目で決めつけない:来歴の記録があれば確かめる[16]。なければ、撮影の経緯の確認に戻る

写真は、何かがあったことを示す強い手がかりになりうる。だからこそ、写真の中だけでなく、写真の外まで確かめる。コティングリーの妖精が60年以上も信じられたのは、写真が「無加工」だったからだ。確かめる手順を持っていれば、同じ落とし穴は避けられる。

資料の事情と、確かめられなかった点 コティングリーの告白の時期は資料で食い違う。The Museum of Hoaxes は「1981年に雑誌『The Unexplained』の取材でジョー・クーパーに告白した」と書き、リーズ大学図書館と国立科学メディア博物館は「1983年の手紙」とする。この記事は後者に従った。2人の撮影時の年齢も資料により違う(博物館は15歳と10歳、リーズ大学は16歳と9歳)ため、本文には書かなかった。『プリンセス・メアリーズ・ギフト・ブック』の出版年は、Wikimedia Commons の説明では1914年、The Museum of Hoaxes では1915年となっている。マクミンビルの天気は、コンドン報告が「約5,000フィートに雲がかかった曇り空(写真でも確認)」とする一方、シェーファーは米気象局の記録では雲がなかったとしており、どちらが正しいかは確かめられなかった。シェーファーの言う「ハートマンが結論を考え直した」は、シェーファー側の記述で、ハートマン本人の文書は確認していない。トラックのミラー説とフランスの調査も、シェーファーのページでの紹介を読んだだけで、原資料は確認していない。米国防総省の2020年の声明と、AAROのプエルトリコの報告書は、配布元のサーバーが自動取得を受け付けなかったため、Internet Archive に保存された同じ文書で引用文を照合した。GIMBALと2004年の映像(FLIR1)について、AAROが個別の解決報告を出しているかは、この調査では確かめていない。ミック・ウェストのグレア説は、フォーラムの投稿と再現の動画が中心で、査読を経た論文ではない。

出典・参考資料

  1. Alex Boese「The Cottingley Fairies」Hoax Photo Database, The Museum of Hoaxes. https://hoaxes.org/photo_database/image/the_cottingley_fairies/(閲覧 2026-10-04)↩
  2. National Science and Media Museum「The story of the Cottingley Fairies shows that image manipulation is nothing new」National Science and Media Museum blog, 2012年7月29日. https://blog.scienceandmediamuseum.org.uk/the-story-of-the-cottingley-fairies-shows-that-image-manipulation-is-nothing-new/(閲覧 2026-10-04)↩
  3. Merrick Burrow「The Cottingley fairies: a study in deception」University of Leeds Libraries Blog, 2020年10月28日. https://leedsunilibrary.wordpress.com/2020/10/28/the-cottingley-fairies-a-study-in-deception/(閲覧 2026-10-04)↩
  4. Stephen Lyons「Birth of a Legend (3): Famous Photo Falsified?」NOVA Online, PBS. https://www.pbs.org/wgbh/nova/lochness/legend3.html(閲覧 2026-10-04)↩
  5. William K. Hartmann「Case 46: McMinnville, Oregon, 11 May 1950」『Scientific Study of Unidentified Flying Objects』(いわゆるコンドン報告, 1968年)写真事例研究(NCAS 掲載の全文テキスト). http://files.ncas.org/condon/text/case46.htm(閲覧 2026-10-04)↩
  6. Robert Sheaffer「The Trent UFO Photos: McMinnville, Oregon - May 11, 1950」The Debunker's Domain(2014年9月10日改訂). https://www.debunker.com/trent.html(閲覧 2026-10-04)↩
  7. U.S. Department of Defense「Statement by the Department of Defense on the Release of Historical Navy Videos」2020年4月27日(照合は Internet Archive の保存版で行った). https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/2165713/statement-by-the-department-of-defense-on-the-release-of-historical-navy-videos/(閲覧 2026-10-04)↩
  8. Naval Air Systems Command「NAVAIR - FOIA Document Library」(公開された映像の配布ページ). https://www.navair.navy.mil/foia/documents(閲覧 2026-10-04)↩
  9. NASA「Unidentified Anomalous Phenomena Independent Study Team Report」2023年9月14日, 28ページ(PDFの30枚目)ほか. https://science.nasa.gov/wp-content/uploads/2023/09/uap-independent-study-team-final-report.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
  10. Mick West「A Gimbal Glare Explainer」Metabunk フォーラム, 2022年1月16日(スレッド内の反論を含む). https://www.metabunk.org/threads/a-gimbal-glare-explainer.12230/(閲覧 2026-10-04)↩
  11. All-domain Anomaly Resolution Office(AARO), U.S. Department of Defense「Case: “The Puerto Rico Object” Case Resolution」2025年3月20日(照合は Internet Archive の保存版PDFで行った). https://www.aaro.mil/Portals/136/PDFs/case_resolution_reports/AARO_Puerto_Rico_UAP_Case_Resolution.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
  12. John Greenewald Jr.「DoD Report Says Aguadilla UFO Was Just Sky Lanterns; Previous Scientific Studies Claim Otherwise」The Black Vault, 2025年. https://www.theblackvault.com/documentarchive/dod-report-says-aguadilla-ufo-was-just-sky-lanterns-previous-scientific-studies-claim-otherwise/(閲覧 2026-10-04)↩
  13. Eric Kee, James F. O'Brien, Hany Farid「Exposing Photo Manipulation from Shading and Shadows」ACM Transactions on Graphics 33(5), 2014年(著者のサイトに掲載された版). https://farid.berkeley.edu/downloads/publications/tog14.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
  14. FotoForensics「Tutorial: Error Level Analysis」. https://fotoforensics.com/tutorial-ela.php(閲覧 2026-10-04)↩
  15. National Institute of Standards and Technology「Reducing Risks Posed by Synthetic Content: An Overview of Technical Approaches to Digital Content Transparency」NIST AI 100-4, 2024年11月. https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/ai/NIST.AI.100-4.pdf(閲覧 2026-10-04)↩
  16. Coalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)公式サイト. https://c2pa.org/(閲覧 2026-10-04)↩
  17. Bellingcat「A Beginner's Guide to Social Media Verification」2021年11月1日. https://www.bellingcat.com/resources/2021/11/01/a-beginners-guide-to-social-media-verification/(閲覧 2026-10-04)↩

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